3月にまつわるエトセトラ(ひな祭りと卒業式)編

3月――それは、春の訪れとともに、別れと始まりが交差する季節。 ひな祭りや卒業式といった行事が注目されますが、意外と知っているようで知らない豆知識も潜んでいます。
ひし餅の色に込められた意味、卒業式の第二ボタンの慣習、そして桜が咲いていないのに“象徴”として使われる理由――。 どれも、日常の中で誰もが触れない話しもあり、ちょっとした豆知識が、話のタネになるかもしれません。
この記事では、そんな3月ならではのひな祭り・卒業式・桜に関する背景を、紐解いていきます。 春の会話がもっと楽しく、心に残るものになれれば幸いです。
ひな祭りの豆知識(なぜ3食)
3月3日は女の子の成長を願うひな祭り。いくつか面白い豆知識があります。
- ひな祭りの起源:ひな祭りは、古代中国の厄払いの行事が日本に伝わり、貴族の遊びである「ひな遊び」と結びついて現在の形になったとされています。
- ひし餅の色が表すもの:ひな祭りに飾るひし餅の3色(桃色、緑色、白色)は、春から冬までの「春夏秋冬」を表しています。
| 色 | 象徴する季節 | 意味・由来 |
|---|---|---|
| 桃色 | 春:花が咲き誇る春 | 桃の花・魔除け・健康祈願 |
| 白色 | 冬:雪が降る冬 | 雪・清浄・純潔 |
| 緑色 | 夏:新緑の季節である夏 | よもぎ・新緑・長寿祈願 |
ひな祭りに飾るひし餅の3色(桃色・白色・緑色)は、季節を表していると言われる説が多いのですが、「春夏秋冬」のように「秋」を代表する色が明確には入っていません。
なぜなのでしょうか?実はここには、日本特有の季節に対する感覚や、ひし餅の持つ本来の意味が関係しています。
ひし餅に秋の色が含まれていないのは、ひな祭りが春の行事であり、春の訪れを象徴する色が選ばれているためです。秋は季節の流れの中で「過ぎ去るもの:秋の枯葉」として扱われ、未来への願いを込める春の象徴に重点が置かれているのでしょう。
ひし餅が3色の意味と「秋」がない理由
- 早春の情景表現:ひし餅の3色(桃色・白色・緑色)は、「雪の下から新芽が芽吹き、桃の花が咲き始める早春の情景」を表している、という解釈が有力です。まだ冬の寒さが残る中で、春の兆しが見え始める3月の情景を表現しているため、秋の要素は含まれていないのです。
- 伝統的な色の意味合い:それぞれの色には、以下のような意味が込められています。
- 桃色(赤色):魔除けや桃の花、先祖を尊ぶ心を象徴します。
- 白色:清浄さや雪、子孫繁栄、長寿を表します。菱の実が繁殖力が強いことから、これらの願いが込められたとされます。
- 緑色:厄除けや健康、新芽の芽吹き、自然のエネルギーを意味します。蓬(よもぎ)を使うことで、その香りにも邪気を払う力があると考えられています。
- 秋が含まれていない理由は、ひな祭りが「春の訪れを祝う行事」であるため。
- 色の順番(桃→白→緑)は「雪の下に新芽があり、その上に桃の花が咲く」という春の情景を表現しています。
秋が省かれる背景
- ひな祭りは3月3日(旧暦では桃の花の季節)に行われる春の節句。
- 秋は「過去の季節」として扱われ、未来への希望や成長を願う春の象徴が優先されます。
このように、ひし餅の色は単に四季を表すだけでなく、女の子の健やかな成長と幸せを願う、より深い意味合いが込められているんですね。
ただし現在では、一部地域や現代アレンジによって、5色ひし餅(桃・白・緑・黄・橙)も登場し、より多様な自然や願いを表現しています。
五色ひし餅には、三色よりも広い自然観・祈りを込めた“拡張版”の意味があり、色ごとに象徴が明確に整理されています。 三色(桃・白・緑)に加えて、黄色・オレンジ(または紫)が入り、自然・季節・祈り・豊穣などをより豊かに表現します。
五色ひし餅の色の意味には、それぞれ違いもあり、調べてみた結果から確認できた代表的な意味合いは、以下のようです。
色の意味(桃・白・緑・黄・オレンジ・紫)
| 色 | 象徴するもの | 意味・願い |
|---|---|---|
| 桃色 | 桃の花 | 魔除け・毒消し・健康 |
| 白 | 雪 | 清浄・純潔 |
| 緑 | よもぎ・若草 | 健康・長寿・厄除け |
| 黄色 | 月 | 豊かさ・静寂・祈り・希望 |
| オレンジ | 太陽 | 豊穣・活力・成長 |
| 紫 | 菖蒲・薬草 | 気品・高貴・厄除け |
※:組み合わせは地域などによって違います。
五色ひし餅が生まれた背景
- 三色菱餅が基本(桃・白・緑)で、魔除け・成長祈願が中心。
- 五色は 地域差や現代的アレンジとして広まり、 「より多様な自然」「豊穣」「祈り」「高貴さ」などを追加した形。
- 教育用・文化教材としても使われることが増え、色の意味が体系化されてきた。
五色菱餅には、三色よりも広い自然観と祈りが込められており、 春の節句に“自然の恵み・祈り・成長”をより豊かに表現するための色構成といえます。
卒業シーズンと桜にまつわるうんちく
3月は多くの学校で卒業式が行われるシーズンでもありますから、卒業にまつわる、ちょっとした豆知識(うんちく)をご紹介します。
「卒業」という言葉の由来
「卒業」という言葉の語源には諸説ありますが、漢字の通り「学業を終える」という意味合いです。しかし、そこには単に学業を終えるだけでなく、社会へ巣立つための準備が「完了する」という意味も込められています。
卒業式が「3月」に集中している理由
日本の学校制度は明治時代に欧米を参考に整えられましたが、年度の区切りだけは農業サイクル(田植え前の3月)に合わせたと言われています。 そのため、卒業式=3月が定着しました。
卒業証書の筒
卒業式で授与される卒業証書が筒に入れられていたのは、紙が貴重だった時代に和紙の証書を折れや汚れから守るためで、丸い筒は「折れない」「汚れにくい」という実用性から生まれ、巻物タイプの証書が多かった名残でもあります。しかし現在では、卒業証書がA3・A4の厚紙タイプに変わり、冊子型のホルダーで渡す学校が増えたことで、筒そのものを使わないケースが多くなり、かつて当たり前だった“卒業証書の筒”は徐々に姿を見せなくなってきています。
卒業式の「黒い学生服」は軍服がルーツ
男子の詰襟は 旧日本陸軍の軍服がモデルで、女子のセーラー服は 海軍の制服(水兵服)がモデルとされています。 「規律」「清潔」「統一感」を重視した結果、学校制服として広まりました。ちなみに水兵服は、イギリス海軍のセーラー服が源流です。
校歌を歌うのは「最後の儀式」
卒業式で校歌を歌うのは、 “その学校の一員である証”を最後に確認する儀式 という意味がある。 実は海外の卒業式にはあまり見られない日本独自の文化。
卒業式の「仰げば尊し」「蛍の光」の歌は日本独自の文化
卒業式で歌われる「蛍の光」は、原曲がスコットランド民謡「Auld Lang Syne」で、本来は旧友を思い出す歌であり別れの歌ではありませんが、日本では明治時代に教育用の歌詞がつけられ、卒業式の定番として定着しました。また、同じく卒業式の代表曲である「仰げば尊し」は作詞者・作曲者が不明で、明治初期にアメリカの歌をもとに作られたとされるものの、具体的な作者は特定されておらず、長年歌い継がれてきた名曲が実は謎に包まれている、という点も興味深いところです。
卒業式の「第二ボタン」文化は戦後に広まった
戦時中に語られた「出征する学生が、もう帰れないかもしれない、という思いから心臓に最も近い第二ボタンを好きな人に渡した」というエピソードが戦後の学校文化の中で象徴性を帯び、やがて青春ドラマや漫画が、その行為を“告白の象徴”として繰り返し描いたことで全国の中高生が真似するようになり、こうして第二ボタンを贈るという慣習が日本の卒業式文化として完成していきました。
卒業式の花「サクラ」は実は“咲いていない”
卒業式の象徴といえば桜ですが、実際には3月上旬はまだ咲いていない地域が多い。 それでも桜が使われるのは、 「別れと旅立ち」「新しい門出」の象徴として文学や歌で定着したからである。
- 「花見」は桜だけ?:日本では、桜を鑑賞することを特に「花見」と呼びます。梅や菊など他の花を鑑賞する場合は「梅見」や「観菊」のように、花の名称をつけて呼ぶのが一般的です。これは、日本人にとって桜が特別な存在であることを示しています。
- お花見の歴史:奈良時代には梅や萩が花の中心でしたが、平安時代になると貴族が桜を題材にした歌を詠み、花見の宴を開くようになりました。江戸時代に庶民の間にも広まり、現在の形になったと言われています。
3月は、自然の芽吹きとともに、日本の文化や行事が最も豊かに息づく季節です。 ひな祭りの色、卒業式の歌や制服、桜の象徴性――どれも長い歴史の中で育まれ、今の私たちの暮らしにそっと寄り添っています。
春は「始まりの季節」。 古いものを手放し、新しい一歩を踏み出す力を与えてくれる時期でもあります。 どうか、この季節があなたにとっても穏やかで、前向きな変化を運んでくれますように。






